高校受験で本当に怖いのは、不合格になることではありません。
もっと怖いのは、受験する前に、すでに選択肢が狭まっていることです。
公立高校は、内申点が中1から積み上がります。
私立高校は、中3秋の実力テストで、ほぼ決まります。
この構造を知らないまま中3を迎えると、「行きたい高校」ではなく「受けさせてもらえる高校」から選ぶことになります。
カリフラワーに住む虫は、カリフラワーが全世界だと思っている。
高校受験も、同じです。
何を知らないかを、知らない。
選択肢を失っていることに、気づけない。
私たちは、知らない家庭に、世界の広さを伝える塾です。
中学校の3年間は、人生の通過点です。
しかし、その通過点で、生徒は人として成長します。
そして、その3年間で、保護者が「知っているか、知らないか」だけで、子どもの人生の選択肢は大きく変わります。
正直に申し上げます。
当時、私は「スケルトン」(部屋の中身が空っぽの骨組みだけの状態)という言葉の意味すら知りませんでした。
契約書を交わし、壁紙や床材がはられていると思いながら、現地を訪れた時、目の前に広がっていたのはこの空間でした。
コンクリートむき出しの壁。
剥き出しの床。
窓から差し込む光だけが、その空間を照らしていました。
ここに、机を置く。
そして、生徒を迎える。
それが、STEP教育学館の始まりでした。
当時の私には、何もありませんでした。
お金も、ありません。
人脈も、ありません。
能力も、ありません。
情報も、ありません。
ネットはありましたが、今のように情報が豊富な時代ではありませんでした。
スマホもまだ、世の中にはありません。
できない理由しか、ない状態でした。
それでも、私は始めました。
開業して半年ほど経った頃でしょうか。
24歳の私に、ある対談の機会が訪れました。
相手は、元WBA世界ライトフライ級チャンピオンの具志堅用高さん。
13回連続防衛という、当時の世界記録を持つ方でした。
机が3〜4個に増えただけの、開業したばかりの私の前に、世界チャンピオンが座ってくださいました。
私は具志堅さんに、こう質問しました。
「勝つ人と、負ける人の違いは何ですか」
具志堅さんは、こう答えられました。
「勝つ人は、途中であきらめない人。何を言われたって、突き進んでいく人だよ。」
当たり前の言葉のように聞こえます。
しかし、その言葉を語る具志堅さんのまなざしは、テレビで見る姿とはまったく違いました。
真剣で、鋭くて、24歳の私の心はえぐられました。
そして、別れ際に、こうおっしゃいました。
「ずっと勝負は続くよ人生は、でも勝負は、今だ。」
机が3〜4個しかなかった、開業したばかりの私への言葉でした。
あれから25年。
私はずっと、この言葉を抱えて教育の現場に立っています。
子どもの人生は、合格で終わりません。
受験は通過点に過ぎません。
だからこそ、目先の合格だけを目指すのではなく、子どもが「ずっと勝負を続けられる力」を育てたい。
「合格させるだけの塾」ではなく、「子どもの人生の選択肢を守る塾」でありたい。
その原点は、何もないスケルトン教室と、24歳のあの日に世界チャンピオンから受け取った言葉にあります。
これまで、4,000名以上の生徒と関わってきました。
点数が上がった生徒もいます。
志望校に合格した生徒もいます。
けれど、私が一番うれしかったのは、点数そのものではありません。
子どもの「姿勢」が変わる瞬間です。
ある女の子の話をします。
小学2年生の時、2万人が受ける全国模擬テストで、彼女の順位は1万8000番でした。
普通なら落ち込む順位です。
しかし、その子はこう言いました。
「下にまだ2000人もいる」
その言葉を聞いた時、私はこの子の中に、強い何かを感じました。
それから2年後、小学4年生になった彼女は、漢検2級に合格しました。
高校3年生でも、大人でも、なかなか合格できない検定です。
何が起きたのか。
特別な才能があったわけではありません。
彼女が身につけたのは、たった2つのことです。
「受からなくても、受けることを決める」
「厳しくても、コツコツ努力する」
漢字をやっているうちに、彼女は漢字が好きになっていきました。
会話をする時の言葉も、理路整然と、分かりやすくなっていきました。
中学生の1日で自由に使える時間は、数時間しかありません。
学校、部活、宿題、睡眠。
その少ない時間を、最も効率よく使うために、25年間、仕組みを磨いてきました。
5点伸びた時、生徒は「先生、5点も伸びたよ」と言います。
その「5点も」を、私たちは生徒と一緒に喜びます。
教育で本当に変わるのは、点数ではありません。
子どもの姿勢です。
ただ、絵を見て気づいたことがあります。
私の表情が、少しこわめに描かれていたのです。
子どもは、大人を正直に見ています。
彼の目に映った私の姿が、この絵に表れていました。
それから私は、もっと笑顔でいようと思うようになりました。
教育で変わるのは、子どもだけではありません。
子どもの目を通して、私自身も日々変わり続けています。
点数を伸ばすのは、当たり前のことです。
しかし、点数を伸ばすために必要なのは、「姿勢を育てる」ことです。
「下にまだ2000人もいる」と笑った彼女。
「先生、5点も伸びたよ」と喜んだ生徒たち。
「もっと笑顔でいてください」と、絵で教えてくれた塾生。
25年の現場で、私はずっと、子どもたちから学び続けています。
これが、STEP教育学館の25年です。
2020年、私は二つの大きな決断をしました。
一つは、布忍教室を予定通り開業すること。
もう一つは、その先で、高見の里教室を閉館すること。(2024年閉館)
正反対の決断のように見えるかもしれません。
しかし、根底にある思いは一つでした。
学びの場を、何があっても守る。
2020年6月、私は布忍教室を開業しました。
緊急事態宣言が出されてから2か月目のことです。
開業準備を始めたのは、その半年前、2019年12月でした。
当時、まだ「コロナ」という言葉を耳にしたばかりの頃です。
すでに話は動いていました。
その後、何が起きたか。
皆様もご存知の通りです。
2020年2月27日深夜、休校宣言が発令されました。
高校受験まで、あと2週間というタイミングでした。
私は、批判ではなく事実を申し上げます。
ウイルスは、人を選びません。
それなのに、なぜ子どもだけが休校になるのか。
大人は時間を短縮しながら外出が認められ、学生は黙食を強いられました。
ある生徒が、泣きながら私に言いました。
「先生、受験どうなるん?」
「塾に来たらいけないの?」
私は、教室を開け続けました。
受験を控えた生徒たちを、見捨てるわけにはいかなかったからです。
しかし、世間からはバッシングを受けました。
「人の命を軽視している」と。
私はここで、それ以上何も言いません。
ただ、悔しくて泣きました。
それでも、ある決意が固まりました。
学びの場は、何があっても守る。
その決意の象徴として、布忍教室を予定通り開業しました。
開業から最初の半年、新規生徒の問い合わせは1人でした。
累積赤字は数千万円に達しました。
家賃補助が1度ありましたが、焼け石に水でした。
それでも、場所も従業員も維持し続けました。
3年間、ただ耐え続けました。
そして、その3年の中で、もう一つの決断をしなければなりませんでした。
2009年に開校した高見の里教室を、2024年10月に閉館することです。
この教室は、税理士の谷川先生から「松原で学習の場を提供したい」とご相談をいただき、何もない土地の前で語り合ったことから始まった場所でした。
マンションの1階に、たくさんの子どもたちが通ってくれた教室でした。
15年間、地域の生徒たちと過ごしたこの教室を閉じる決断は、心がえぐられるような痛みでした。
痛みが強すぎて、最後にはその痛みすら感じなくなっていました。
それでも、決断しなければなりませんでした。
塾全体を、生かすために。
一つの教室を守ることで、他の教室の生徒たちまで守れなくなる。
そのリスクを抱えるわけにはいきませんでした。
決断の重みに耐えていた私を、支えてくれた言葉があります。
学生時代から私を知り、社員として塾を下支えしてくれていた、教室長の宮本一樹。
宮本は、私にこう言いました。
「塾長が下した判断を、正解にする」
この言葉に、私は救われました。
経営者は、孤独な決断を背負うものです。
しかし、その決断を「正解にする」と言ってくれる仲間がいることは、何にも代え難い財産です。
コロナ禍で抱えた数千万円の赤字は、今も私の経営の中に残っています。
しかし、その赤字は、いつしか「頑張る理由の一つ」に変わっていました。
コロナ禍が落ち着いた後、卒塾生たちが集まってくれた日がありました。
打ち上げの席に並んだ顔ぶれを見ながら、私は静かに感慨に浸っていました。
3年間、コロナ禍で苦しみ、教室を一つ閉じる決断もした。
そんな日々を超えて、卒塾生たちが再び集まってくれている。
塾を続けていなければ、この瞬間はありませんでした。
子どもたちは、卒塾しても私たちのことを忘れずにいてくれる。
そして、自分の人生を歩み始めた姿を、私たちに見せに来てくれる。
これが、25年間続けてきた仕事への、何よりの報いです。
「学びの場を、何があっても守る」
その決意は、今、こうして卒塾生たちの笑顔として戻ってきています。
「成果責任でお預かりする」という言葉を、私はSTEP教育学館の中核に置いています。
この言葉の重みは、布忍教室の3年間と、高見の里教室の閉館で、自分自身が証明してきたつもりです。
子どもたちの学びは、大人の都合では絶対に揺らがせない。
それが、私の25年間の答えです。
私は、子どものやる気を待つだけの指導はしません。
やる気は、待つものではなく、設計するものです。
そう言える理由は、私自身が「学ぶ仕組み」を学び続けてきたからです。
2014年、塾を開業して13年が経った頃、私は東京まで通い始めました。
現代文のスペシャリスト、出口汪先生の「論理エンジン マスタープログラム」を受講するためです。
月に1回、東京に行き、朝から夜まで論理の習得に没頭しました。
コの字型に並んだ机に座り、出口先生の話を一言も逃すまいとノートを取り続けました。
すでに塾を13年運営していた私が、もう一度「学ぶ側」に戻る経験でした。
論理を学んだことで、私の話す順番が変わりました。
それを変えるためのコツを覚えました。
結果として、現代文の読解問題で悩むことがなくなりました。
それどころか、「この選択肢、あまりよくないですね」と問題自体に突っ込めるレベルまで到達しました。
出口先生の一番弟子になれたことは、今も誇りに感じています。
37歳で、東京通いを始めた理由は一つです。
子どもに「努力の姿勢」を教える指導者が、自分自身が学び続けていなければ、その言葉に重みは出ない。
STEP教育学館では、子どもに「仕組みで動く力」を教えています。
それは、私自身が「仕組み」を学び続けてきた経験から生まれた指導方針です。
「覚悟の瞬間」というWebTV番組に出演しました。
安倍晋三氏、テリー伊藤氏、ラモス瑠偉氏、田原総一朗氏など、各界の第一線で活躍される方々と並んで「覚悟」を語る機会をいただきました。
私はそこで、「勉強」という言葉が嫌いだと話しました。
「勉める」「強いる」と書く。
強いられて勉めるものが、本当の学びなのでしょうか。
人生には、勉強よりもっと大事なものがあります。
しかし、目の前の学習にすら打ち込めない、誘惑に簡単に負けてしまうのでは、将来選択できる人生はやってこない。
10年以上前のこの言葉は、今のSTEP教育学館の哲学と何一つ変わっていません。
「受かるか」ではない。「選べるか」である。
私が25年以上、同じことを言い続けてきた理由は、ここにあります。
やる気は、待つものではなく、設計するものです。
子どもの教育は、保護者にとって人生で最も難しい挑戦の一つです。
だからこそ、私たち塾は、保護者と並走する存在でなければなりません。
「やる気が出てから始めよう」では、間に合わないのです。
現在地を確認する。
必要な課題を絞る。
小テストで定着を見る。
解き方の型を整える。
続けられる環境を作る。
その積み重ねが、成績を変え、習慣を変え、進路の選択肢を広げます。
これが、STEP教育学館の「成果責任」です。
「合格させる」と言うのは簡単です。
しかし、私たちは、その先を見ています。
子どもが社会に出た時に、「自分で選び、自分で進める力」を持っていること。
そのために、今、仕組みで動かす指導をします。
2025年、私はテレビ局の取材を受けました。
取材のテーマは、「AIの新時代に対応する学習塾」でした。
私自身、塾の経営にAIを活用しています。
ChatGPT、Claude、Geminiといった複数のAIを使い分けながら、教材の研究、保護者対応の設計、HPやMEO投稿の改善にまで活用しています。
これは、子どもの教育に最善を尽くすために、使えるものは使うという私の方針です。
しかし、取材の最後に、私はあえてこう申し上げました。
最後に大切なのは、人です。
AIは、情報を整理し、選択肢を広げる強力な道具です。
しかし、子どもの心に寄り添い、保護者の不安を受け止め、生徒の成長を一緒に喜ぶことは、AIにはできません。
塾は、人と人が出会う場所です。
机を挟んで向き合い、目を見て話し、時には沈黙を共有する。
その時間の中で、子どもは大人を信頼することを覚え、自分自身を信じる力を育てていきます。
24年前、私が机一つから塾を始めた頃。
具志堅用高さんから「ずっと勝負は続くよ。人生は」という言葉をいただいた頃。
その時に大切だったものは、25年経った今も、何一つ変わっていません。
技術は変わります。
しかし、子どもの学びを支える人の本質は、変わりません。
STEP教育学館は、これからも、人と人が出会う場所であり続けます。
私は、すべての子に同じ言葉をかけるつもりはありません。
必要なことは、一人ひとり違います。
ただ、一つだけ約束できることがあります。
お子さまの今の状態を、曖昧なままにはしません。
何が足りないのか。
何を変えるべきなのか。
どこから始めればよいのか。
まずは、そこを一緒に整理します。
入塾を決める必要はありません。
「中3になる前に、一度話だけ聞いてみたい」
それで十分です。
お子さまの未来の選択肢を守るために、まずは現在地を確認してください。
私たちは、保護者の方と並走する塾です。
お子さまの人生は、お子さまのものです。
そして、その人生を「選べる状態」にしておくことは、私たち大人の責任です。
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